理系おじさんの社会学
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プロパガンダの犠牲者(フランス革命)
フランス革命前にルイ16世の王妃マリー・アントワネットが「パンがなければケーキを食べれば良いではないか」と述べたとされた。現在では事実ではないことが明らかになっている。有名な「首飾り事件」とともに「贅沢の限りを尽くした」として革命の「生贄」にされたのが事実だった。それは当時のパリ市民に憎悪させる手段として利用された。

これは西洋史で典型的なプロパガンダだったと言える。フランス革命の原因は様々ある。私は遠因は気候変動と考えている。「文明の発展と衰退は農業にある」と私は常に述べてきた。18世紀中ごろは世界的に冷害の被害が多く、それに追い討ちしたのがアイスランドの火山、そして日本の浅間山の噴火だった。噴火の影響は現在でも議論はあるが、世界的に冷害があったことは事実。(日本でも江戸時代に四大飢饉が発生している)

フランス革命以前、いかに当時のブルボン王朝が優雅な暮らしといっても、それでフランス経済が傾いたわけではない。それは当時の経済データからも明らかである。しかし当時の庶民は現在のような学問が普及しているわけでもなく情報も制限されているので「食料危機」があれば仮想敵を簡単に作り出せる情勢だった。そしてマリー・アントワネットが諸悪の根源のようなプロパガンダが流され革命に利用されたわけだ。

ここで歴史を考えるときの重要なことは、当時の自然環境(冷害)、経済指標、そして社会情勢である。こうした内容を地道に確認すれば事実だったか嘘だったかが解明できる。歴史は歴史文献だけを見ても解らない。科学的検証や経済的検証が必要である。また社会的にも嘘のプロパガンダの影響で「空気」をつくりベクトルがマイナス方向に向かえば社会に必ず歪が生まれる。フランス革命後に歴史家のフランソワ・ギゾーや思想家のアレクシス・トクビルはそうしたことに逸早く気付いていた。

現在、フランスでは1789年バスチーユ牢獄の攻撃のあった7月14日を革命記念日にしている。しかし現代フランスの知識人たちはマリー・アントワネットがプロパガンダの犠牲者だったことを皆知っている。革命後に処刑されたマリー・アントワネットの遺骨は後の掘り起こされ、ルイ16世のとなりに葬られている。この行為もフランス人の歴史的事実に対する謙虚さと正義感のあらわれであろう。

そしてベルサイユ宮殿も当時のまま残されている。もしこれが中国や朝鮮だったら、すべて破壊されてブルボン王朝を1000年の恨みの対象にしていただろう。「パンがなければケーキを食べれば良いではないか」というのが事実でないと言えば「歴史修正主義」と言うであろう。しかしフランスはそうではなかった。このあたりがフランス国民の高い民度を示している。現在フランスは様々な問題を抱えているかもしれないがフランスの潜在的な強さは決して失っていない。

私個人の話で恐縮だが、ちょうど今から20年前のこと。私がベルサイユ宮殿を訪問したときのことを今でもよく覚えている。少し古びれたオレンジマーブル(大理石)が敷き詰められた宮殿。有名な鏡の間の奥に様々な部屋がある。マリーアントワネットが出産した際のベットがある。高々としたベットは出産を多くの関係者で確認する場であったという。本人はさぞかし嫌だっただろう。

そして大きな彼女の肖像画がある。ルーブル美術館にも同じ絵があるがバラの色だけが違っている。どちらかが白いバラで、どちらかが赤いバラだがよく覚えていない。そして少し離れた場所に、プチトリアノンと呼ばれる田舎風の建物がある。彼女はそこをこよなく愛していたという。田舎風の服を着てごく親しい人たちのみを招待していたとのこと。実は人間味あるれる人物だった。私は何故かグラントリアノン(メインの宮殿)よりも、この田舎風のプチトリアノンに魅了された。

現在でも世界各地で様々なプロパガンダが行われている。純粋に国威高揚としてのプロパガンダすることは然程問題ではない。フランスの作曲家ドビュッシーの名言「芸術は最も美しい嘘である」・・・これもたいへん結構なことである。しかし事実でない「醜い嘘」を事実のように政治的プロパガンダとして利用する。これは絶対に許してはならない。

幸いなこと現代社会はフランス革命当時と異なり、エビデンスが重視され様々な情報入手が可能である。虚構ファンタジーに惑わされることなく社会を構築すること可能である。最近ではあのアメリカでさえイラク戦争以降はプロパガンダ戦略の限界を感じている。こういう社会に成りつつあることに感謝するとともにプロパガンダの犠牲者に哀悼の意を捧げたい。

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テーマ:歴史 - ジャンル:政治・経済

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こういう現代人は実は多い。自分は無宗教である、とあからさまに言うのは気が引けるけ
[2014/06/26 20:45] 哲学はなぜ間違うのか?

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「常に勉強」それがモットーの理系おじさんのブログです。理系おじさんの目から見た現代社会を鋭く論じたい。またこのブログに関する意見があれば賛否両論問わず受け付けます。基本的には現代社会を勉強して共有するのが目的です。

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